当院の手術に対する考え方
当院では、手術を対象とするあらゆる皮膚腫瘍(一部悪性腫瘍を含む)について、十分な評価を行ったうえで手術の可否を判断しています。
- 自院で安全に完結できる手術は責任をもって対応
- 診断が不確かな場合、悪性が疑われる場合は検査を優先
- 画像検査や全身麻酔、複数人での手術が必要な場合は紹介
というスタンスです。
「とにかく取る」のではなく、きちんと診て、評価して、手術する・しないを判断する
それが当院の基本方針です。
皮膚腫瘍の手術について
当院では、良性腫瘍を中心とした幅広い皮膚腫瘍の切除手術に対応しています。悪性であっても、転移の可能性が極めて低く、全身検索を必要としない疾患(例:基底細胞癌、Bowen病、日光角化症など)は、局所手術での治療が可能です。
※リンパ節転移や遠隔転移のリスクが高い悪性腫瘍(例:悪性黒色腫など)は、専門施設での治療が必要です。
当院で扱う主な皮膚腫瘍
上皮性腫瘍
- 粉瘤(表皮嚢腫):
袋状で壁内に角質を容れる腫瘍。時に炎症をきたし腫れることがあります。 -
脂漏性角化症:
加齢に伴って出現する良性腫瘍。整容目的で、冷凍凝固療法、サージトロン治療(自費)などで治療しますが、他疾患との鑑別が必要な場合などでは手術を選択します。 - ウイルス性疣贅:
いわゆる「いぼ」。難治例では切除を行うことがあります。 - エクリン汗孔腫:
汗腺由来の腫瘍で、いくつかのタイプがあります。確定診断を兼ねて切除します。
- 脂腺母斑/表皮母斑:
将来的な腫瘍化リスクや整容面を考慮して切除することがあります。 - 毛母腫(石灰化上皮腫):
皮下に硬いしこりとして触れる腫瘍。手術での完全摘出が基本です。 - ケラトアカントーマ:
急速に増大する腫瘍。有棘細胞癌との鑑別のため切除が原則です。
- 日光角化症:
表皮内にとどまる皮膚がんの初期。局所切除や外用治療で対応します。 - Bowen病:
表皮内がん。適切なマージンを取った切除で根治可能です。 - 基底細胞癌:
転移は極めてまれで、局所での完全切除が治療の基本です。
色素細胞腫瘍
- 色素性母斑(ほくろ):
整容目的で、サージトロン治療(自費)を行っています。悪性との鑑別や手術の方が整容的に優れると判断される場合に手術を選択します。 - 青色母斑:
深部に色素がある母斑。鑑別のため切除することがあります。
軟部腫瘍
- 脂肪腫/血管脂肪腫:
最も頻度の高い皮下腫瘍。局所麻酔での日帰り手術が可能です。 - 皮膚線維腫:
下腿に多くみられる硬い結節。症状があれば切除します。 - 軟性線維腫:
首や腋にできる小さな隆起。整容目的で、主にサージトロン治療(自費)を行います。サイズが大きい場合に手術を選択します。 - 神経線維腫/神経鞘腫:
神経由来の腫瘍。しびれや疼痛を伴う場合があり、手術を考えます。 - 皮膚平滑筋腫:
圧痛を伴うことがあり、手術を考えます。 - 静脈湖:
口唇に多い青紫色の病変。切除や焼灼で対応します。 - 被角血管腫:
出血を繰り返すことがあり、手術を考えます。
手術をご検討中の方へ
皮膚のしこりやできものは、見た目だけでは良性・悪性の判断がつきません。「急に大きくなった」「色が変わった」「出血する」「痛みがある」などの症状があれば、早めの受診をおすすめします。
手術は、丁寧に診察をし、臨床診断をつけた後に行っています。さらに、切除後は必ず病理組織検査に提出し、組織診断を確認しています。見た目だけでは診断がはっきりしない場合(特に悪性が否定できない場合)は、部分的に皮膚を採取し(皮膚生検といいます)、診断を確認してから手術を計画しております。まれに、切除後に想定していた腫瘍と異なっていたことが発覚するケースも存在するため、重要なプロセスとなります。
皮膚のできものを、診断をつけずにただとる、という治療は、危険を伴うため当院では行っておりません。
また、切除後の傷の縫合はできるだけ傷が目立たないように意識しておこなっています。そのまま縫い合わせるのが難しい、そのまま縫うと傷が目立ってしまう、といった場合は、周りの皮膚を移動させて縫合する(皮弁作成術といいます)こともあります。
手術をしたらあとはおわり、ということではなく、傷が目立ってこないこと、腫瘍によっては再発がないことがある程度確認できるまで経過をみさせていただいております。
手術の流れ
患者さんの実際の体験に近い流れで、手術がどのように進むのかを説明します。
1診察・術前評価
まず医師が腫瘍の状態を視診・触診し、
- 大きさ
- 皮膚との癒着の程度
- 深さなど
- 炎症の有無
を確認します。(必要に応じて超音波検査を行います)。
2手術説明
診断名、手術名、手術の内容、合併症などについて、文書を用いて絵をかきながらご説明致します。ご納得いただけましたら、手術日時を決定します。
手術当日
3局所麻酔
手術は局所麻酔で行うため、意識は保たれたままですが、手術中の痛みはしっかり抑えられます。
- 麻酔注射の際にチクッとする
- 数分で感覚が鈍くなり、痛みはほぼ消失
麻酔が効いてから手術を開始します。
4メスによる切開
腫瘍の大きさ・形に合わせて、皮膚にメスで切開を加えます。切開は最小限にとどめつつ、袋・被膜が破れないようにアプローチすることが重要です。
5腫瘍の剥離・摘出
腫瘍によって異なりますが、腫瘍をしっかりと取り切れるように摘出していきます。
6止血と縫合
- 腫瘍を摘出したあとは、出血をコントロールし、皮膚を丁寧に縫合して傷を閉じます。
- 傷の大きさは腫瘍のサイズや深さによって変わります。
- 縫い方は傷跡をきれいにするため、
状況に応じて工夫して行います。
7手術後の処置・帰宅
- 縫合部にガーゼやテープを貼り、短い説明を受けてそのまま帰宅できます(日帰り)。
- 手術当日のシャワーは基本的に控えていただきますが、
状況によっては可能です。 - 激しい運動・飲酒は数日控えましょう。
- 抗生剤や痛み止めが処方されることもあります。
-
部位や大きさによりますが、通常日常生活はすぐに再開できます。
8抜糸・経過観察
縫合した糸は 1週間~10日前後で抜糸します。
9病理組織結果の説明
病理組織診断がつき次第、患者様にご説明いたします。
10経過観察
部位や傷の状態によって前後しますが、抜糸後はテープ固定を続けることで傷跡がよりきれいに治りやすくなります。 傷が目立ちやすい部位では、より慎重にフォロー致します。
よくある皮膚腫瘍、“粉瘤”、“脂肪腫”について
粉瘤とは
粉瘤(表皮嚢腫)は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質や皮脂がたまる良性腫瘍です。顔・首・背中・耳の後ろ・お尻など、皮脂腺の多い部位にできやすく、皮膚科の日常診療で最も多くみられる腫瘍の一つです。

多くの場合、中央に黒い点(開口部)があり、押すと独特の臭いのある内容物が出ることがあります。初期は無症状のことも多いですが、自然に治ることはありません。
問題となるのは、炎症です。赤く腫れて強い痛みを伴ったり、膿がたまったりすると、切開や排膿が必要になることがあります。炎症を繰り返すと、傷跡が大きくなる・治りが悪くなるなどのリスクが高まります。
粉瘤治療で最も重要なのは、中身ではなく「袋ごと」完全に取り除くことです。袋が残ると再発するため、診察で粉瘤と診断がついた場合は、状態を評価したうえで切除手術を行います。
メスによる切除手術は、
- 袋ごと取り除くため、根治性が高い
- 再発リスクが低い
- 腫瘍が大きくても確実に取り切れる
- 仕上がりの予測が立てやすい
などのメリットがあります。
粉瘤摘出手術の留意点
粉瘤の手術をまっている間に炎症を起こして腫れてしまうことがあります。この状態では、手術範囲が大きくなったり、傷が残りやすかったりしてしまうため、まずは腫れを落ち着かせて、後日改めて摘出手術を検討します。炎症を繰り返してしまうと切除範囲が大きくなる傾向にあるため、腫瘍が小さく炎症を起こさないうちに切除することが望ましいでしょう。
脂肪腫とは
脂肪腫は、皮下の脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍です。背中・肩・腕・太ももなどに多く、皮膚の下に柔らかく触れるしこりとして認識されます。
一般的には痛みがなく、ゆっくりと大きくなるため放置されやすい腫瘍ですが、
- サイズが大きくなってきた
- 見た目や触った感じが気になる
- 服に擦れて違和感がある
- 他の腫瘍との鑑別が必要
といった理由から、手術が検討されることがあります。
手術の際は、滑らかな被膜に包まれた脂肪塊を剥離し、摘出します。
通常は簡単に取り出せますが、部位によっては周囲組織と剥離しにくい場合があり、被膜を残さないようより丁寧に摘出する必要があります。
脂肪腫摘出手術の留意点
脂肪腫は、深さ・大きさ・位置の評価が非常に重要です。皮下より深部に及ぶ病変や、触診だけで判断が難しい場合には、画像検査(超音波・MRIなど)による評価が必要になります。
そのため当院では、
- 皮下に限局し、触診で明らかに脂肪腫と判断できるもの
- 局所麻酔・日帰りで安全に対応できるもの
に限って手術を行い、深部病変・大型病変・診断が不明瞭な場合は、適切な医療機関へ紹介しています。
皮膚外科・日帰り手術のよくあるご質問
粉瘤(アテローム)について
粉瘤は自然に治ったり、小さくなったりすることはありますか?
残念ながら、粉瘤が自然に消えることはほとんどありません。粉瘤は「袋(嚢腫)」の内側に角質や皮脂が分泌され続ける構造になっているため、時間の経過とともに徐々に大きくなるのが一般的です。まれに内容物が排出されて一時的に小さく見えることがありますが、袋そのものは残っているため、再び膨らんだり炎症を起こしたりする可能性があります。根治には袋ごと摘出することが必要です。
粉瘤が腫れて痛くなったとき、どう対処すればいいですか?
粉瘤が赤く腫れ、
抗菌薬内服で様子をみる
粉瘤は必ず手術しないといけませんか?
小さく、痛みもない粉瘤は経過観察も可能です。しかし粉瘤は自然に治らず、
- 徐々に大きくなる
- 見た目が気になる
- 炎症を繰り返す
といったリスクが高いため、多くの場合は手術による摘出が望ましい治療となります。特に一度でも炎症を起こした粉瘤は再発・悪化しやすく、早めの摘出が結果的に傷跡も小さく済むことが多いです。
粉瘤とにきびはどう違うのですか?
見た目が似ることがありますが、まったく別物です。にきびは皮膚表面の毛穴に炎症が起きる疾患で、触ると痛みを感じることが多いです。一方、粉瘤は皮膚の下に袋ができて老廃物がたまった“腫瘍”であり、しこりが深く、表面に黒い点(開口部)が見えることがあります。治療法も大きく異なり、にきびは薬で治せますが、粉瘤は袋の摘出=外科的手術が必要となります。
粉瘤が破れて中身が出たのですが、このままにしておいて大丈夫ですか?
自然に破れて中身が出ると痛みが軽くなることがありますが、袋は完全に残っている状態です。袋を放置すると、再び老廃物がたまり、
- 腫れの再発
- 感染
- 炎症の悪化
を繰り返すことがあります。破れた後は皮膚が傷つきやすく感染も起きやすいため、袋ごとの手術が推奨されます。
脂肪腫(リポーマ)について
脂肪腫はがんになる可能性がありますか?
脂肪腫は良性腫瘍であり、通常はがん化しません。ただし「脂肪肉腫」という別の腫瘍が脂肪腫と見た目が似ることがあるため、
- 急激に大きくなってきた
- 触ると硬さが強い
- 痛みがある
などの特徴がある場合は念のため医師の診察を受けることが重要です。
脂肪腫は小さいうちに取るほうが良いのでしょうか?
小さいうちに摘出するメリットは大きいです。脂肪腫は成長すると切開が大きくなり、摘出操作も複雑になります。小さい段階であれば、
- 傷が小さく済む
- 手術時間が短い
- 術後の負担が軽い
といった利点があります。
見た目や違和感が気になり始めたら早めの相談をおすすめします。
マッサージや運動で脂肪腫は小さくなりますか?
脂肪腫は脂肪細胞の塊であり、押したり揉んだりしても小さくなることはありません。体脂肪とは仕組みが異なるため、運動や食事制限でも縮小しません。唯一の根治治療は、被膜ごと外科的に摘出する方法です。
脂肪腫が痛むことはありますか?
脂肪腫自体は柔らかく、通常は痛みを伴いません(血管脂肪腫など病型によっては痛みを伴うことがあります)。
また、神経や筋膜の近くにある脂肪腫では、圧迫されることで
- 鈍い痛み
- 動かしたときの違和感
- 重だるさを感じる
ことがあります。
痛みが続く場合は診察を受け、摘出を検討するのが良いでしょう。
大きな脂肪腫でも日帰り手術で取れますか?
多くの脂肪腫は日帰りでの摘出が可能です。ただし10cmを超える大きさや、筋肉の深い層にできている場合は、
- 麻酔方法の変更
- 手術時間の延長
- 安全確保のための追加検査
が必要になることがあります。
- 診察で大きさと深さを確認した結果このようなケースが推測される
場合は、連携している病院にご紹介させていただきます。
メスによる日帰り手術についてのご質問
手術はどのくらいの時間がかかりますか?
腫瘍の種類や大きさによって異なりますが、
- 小さな粉瘤:10〜15分
- 中程度の脂肪腫:20〜30分程度
が一般的です。
事前の説明や準備を含めても、1時間以内で終了するケースが多く、日帰り手術として安心して受けられます。
手術中の痛みはありますか?
手術は局所麻酔で行うため、切開や摘出の痛みはきちんと抑えられます。麻酔注射のときに数秒の痛みがありますが、その後は違和感程度で手術を進められます。痛みが強い場合は麻酔を追加できるため、我慢する必要はありません。
傷跡はどれくらい残りますか?
傷跡の大きさは腫瘍のサイズと位置によって決まります。医療機関では可能な限り小さく切開し、形成外科的な縫合法を用いて、仕上がりがきれいになるよう配慮します。術後にテープ固定を続けると、さらに傷跡が目立ちにくくなります。時間の経過とともに薄くなり、最終的には細い線のようになる方がほとんどです。
手術後はいつから仕事や運動に戻れますか?
デスクワークは翌日から可能なことが多いです。ただし、部位によっては引っ張られやすいため、
- 激しい運動
- 入浴(湯船)
- 飲酒
などは数日〜1週間ほど控えていただくことがあります。医師の指示に沿って無理なく再開してください。
再発を防ぐために手術後に注意すべきことはありますか?
再発は “袋(粉瘤)・被膜(脂肪腫)が一部残った場合” に起こります。そのため、再発予防は術後の生活よりも 手術での完全摘出が鍵 となります。術後は、
- 傷を清潔に保つ
- 指示された期間テープ固定を続ける
- 強くこすらない
といった基本的なケアを守れば問題ありません。適切に摘出されていれば、再発は非常に少ないです。