皮膚の感染症とは
皮膚感染症は、細菌・ウイルス・真菌(カビ)・寄生虫などの微生物が皮膚に侵入・増殖することで発症する疾患の総称です。
日常的な小さな傷やかき壊し、皮膚トラブルをきっかけに感染が成立することがあり、免疫力の低下や長時間の接触、生活環境も発症に影響します。
皮膚感染症は見た目が似ていても原因が異なるケースが多く、治療方法も原因ごとに大きく異なります。そのため、自己判断で市販薬を使用すると、原因に合わず症状が長引いたり、悪化したりする可能性があります。
赤み・かゆみ・水ぶくれ・痛みなどの症状が数日以上続く場合や、広がる・強くなるといった変化がみられる場合は、早めに皮膚科を受診し、医師の診断を受けることが重要です。
細菌性疾患
とびひ(伝染性膿痂疹)
とびひは、皮膚の表面に存在する常在菌や外部から侵入した細菌が、皮膚のバリア機能が低下した部分に感染することで発症する疾患です。主に黄色ブドウ球菌が原因となり、虫刺されや湿疹、あせも、軽い擦り傷などを掻き壊した部位から感染が始まります。特に皮膚が未成熟な小児に多くみられ、夏場など汗をかきやすい時期に発症しやすい傾向があります。
とびひの症状
初期には赤みや小さな水ぶくれが現れ、次第に水疱が破れてただれた状態になります。その後、黄色〜茶色のかさぶたを形成することが多く、強いかゆみを伴います。患部を掻いた手で別の部位を触ることで、短期間のうちに病変が広がるのが特徴です。顔や腕、脚など露出部に起こりやすく、見た目の変化から不安を感じる方も少なくありません。
とびひの診断と治療
皮膚の状態や症状の広がり方をもとに診断され、症状に応じて抗菌薬の外用や内服が検討されます。治療とあわせて、患部を清潔に保つことや、タオル・衣類の共用を避けるなどの日常生活での対策も重要とされます。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)
蜂窩織炎は、皮膚の表面だけでなく、その下にある皮下組織まで細菌感染が及ぶ疾患です。原因菌としてはレンサ球菌や黄色ブドウ球菌が多く、切り傷やすり傷、皮膚炎などをきっかけに発症することがあります。年齢を問わず起こりますが、基礎疾患がある方では注意が必要です。
蜂窩織炎の症状
感染部位の皮膚が赤く腫れ、熱を持ち、押すと強い痛みを感じるのが特徴です。炎症が広がるにつれて腫脹の範囲が拡大し、発熱や寒気、全身のだるさといった全身症状を伴う場合もあります。
蜂窩織炎の診断と治療
臨床症状を中心に診断され、抗菌薬による治療が行われます。症状の進行が早い場合もあるため、早期に医療機関を受診し、医師の判断のもとで治療を受けることが重要です。
ウイルス性疾患
帯状疱疹
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜伏した状態から、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。加齢、疲労、ストレス、他の病気などが誘因となることがあります。
帯状疱疹の症状
初期には皮膚の違和感やピリピリとした痛みが現れ、その後、体の左右どちらか一方に赤い発疹や水ぶくれが帯状に出現します。皮疹が治まった後も、神経に沿った痛みが長期間残ることがあり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
帯状疱疹の診断と治療
症状の経過や皮疹の分布から診断され、抗ウイルス薬による治療が検討されます。 症状や経過には個人差があるため、違和感を覚えた段階で医師に相談することが望まれます。
単純ヘルペス
単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが皮膚や粘膜に感染することで起こる疾患です。初感染後、ウイルスは神経節に潜伏し、体調不良やストレスなどで免疫力が低下した際に再発することがあります。
単純ヘルペスの症状
口唇やその周囲、または性器周辺に、小さな水ぶくれや赤みが生じます。発症前にチクチクした違和感や軽い痛みを感じることがあり、繰り返し同じ部位に出現することもあります。
単純ヘルペスの診断と治療
症状や既往歴をもとに診断され、必要に応じて抗ウイルス薬が使用されます。再発を繰り返すケースもあるため、症状の変化に注意することが大切です。
再発性の単純ヘルペスでは、Patient Initiated Therapy(PIT)と言う治療があります。あらかじめ処方しておいた抗ウイルス薬を、症状の出はじめと同時に短期間内服する方法です。条件がありますが、忙しく受診できない方、一日でも早く改善させたい方に向いています。
真菌(カビ)による疾患
水虫(足白癬)・爪水虫(爪白癬)
水虫や爪水虫は、白癬菌と呼ばれる真菌が皮膚や爪の角質に感染することで起こります。高温多湿の環境や足の蒸れが、発症や再発の要因となります。
水虫や爪水虫の症状
足の指の間の皮むけ、かゆみ、水ぶくれ、足裏の角質肥厚など多様な症状がみられます。爪に感染が及ぶと、爪が白く濁ったり厚く変形したりすることがあります。
水虫や爪水虫の診断と治療
顕微鏡検査などで原因菌を確認したうえで、抗真菌薬の外用や内服が検討されます。自己判断で市販薬を使用する前に、医師の診断を受けることが推奨されます。
カンジダ症
カンジダ症は、皮膚や粘膜に常在するカンジダ菌が、湿潤環境や免疫低下を背景に異常増殖することで発症します。
カンジダ症状
皮膚の赤みやただれ、かゆみが現れ、部位によっては白い付着物がみられることがあります。脇の下、股間、乳房の下など蒸れやすい部位に起こりやすいのが特徴です。
カンジダ症の診断と治療
検査によって原因菌を確認し、抗真菌薬による治療が検討されます。他の皮膚疾患との鑑別が重要なため、自己判断による治療は避けることが大切です。
疥癬(かいせん)
疥癬は、ヒゼンダニが皮膚の角質層に寄生することで起こる感染症です。直接接触や寝具の共用などを介して感染が広がることがあります。
疥癬の症状
強いかゆみが特徴で、特に夜間に症状が強くなる傾向があります。指の間や手首、体幹などに赤い発疹や線状の皮疹がみられることがあります。
疥癬の診断と治療
ダーモスコピーを用いて観察し、顕微鏡検査で虫体や虫卵を確認し診断します。駆除薬による治療が行われます。周囲への感染拡大を防ぐため、医師の指示に従った対応が重要です。
皮膚感染症のよくあるご質問(FAQ)
同じような赤みやかゆみでも、原因が違うことはありますか?
はい、あります。見た目が似ていても、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫など原因が異なるケースが多く、治療方法も大きく異なります。自己判断で薬を使用すると、かえって症状が長引くことがあるため、医師の診断が重要です。
家族や周囲の人にうつる可能性はありますか?
疾患によっては、接触や生活用品の共有を介して感染が広がる可能性があります。 症状がある間は、タオルや寝具の共用を避けるなど、日常生活での配慮が必要とされる場合があります。
皮膚症状が一度よくなっても、再発することはありますか?
はい、再発するケースもあります。特にウイルス性疾患や真菌感染症では、体調や生活環境の変化をきっかけに症状が再び現れることがあります。再発を繰り返す場合は、再度医師へ相談することが勧められます。
市販薬を使っても改善しない場合、どうすればよいですか?
一定期間使用しても改善がみられない場合や、症状が悪化する場合は、医療機関での診察を受けることが重要です。原因が異なる疾患の場合、市販薬が適さないこともあります。
かゆみが強い場合、掻かない方がよいのでしょうか?
掻くことで皮膚が傷つき、感染の拡大や悪化につながる可能性があります。かゆみが強い場合は、無理に我慢せず、医師に相談することが大切です。
症状が軽くても受診したほうがよいですか?
軽症に見えても、経過によっては広がったり長引いたりする疾患があります。数日経っても改善しない場合や、症状が増えてきた場合は、早めの受診が安心につながります。
子どもや高齢者は特に注意が必要ですか?
はい、注意が必要です。小児や高齢者は皮膚のバリア機能や免疫力の影響を受けやすく、症状が急に悪化することもあるため、早めの受診が推奨されます。
皮膚症状があるとき、入浴やシャワーは控えるべきですか?
基本的には、患部を清潔に保つことが大切とされています。ただし、強くこすったり、長時間の入浴で刺激を与えたりすると症状が悪化することがあるため、方法については医師の指示に従うことが望まれます。
痛みや発熱を伴う場合は注意が必要ですか?
はい、注意が必要です。皮膚症状に加えて強い痛みや発熱、全身のだるさがある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
受診時に医師へ伝えておくとよいことはありますか?
症状が出た時期、広がり方、かゆみや痛みの有無、これまでに使用した薬などを伝えると、診断や治療方針の判断に役立つことがあります。気になる点は遠慮せず相談しましょう。
医師からのメッセージ
皮膚感染症は、原因となる微生物や症状の現れ方、進行の仕方が疾患ごとに異なります。見た目が似ていても、治療方針が大きく変わることも少なくありません。
赤みやかゆみ、痛みなどの症状が続く場合や、次第に悪化していると感じる場合は、自己判断で対処せず、早めに医師の診断を受けることをお勧めします。